(公財)喝破道場

 喝 破 五 訓

よろこんで与える人間となろう

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命を大切にする人間となろう

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心静かに考える人間となろう

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使命に生きる人間となろう

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規律ある幸せ喜ぶ人間となろう

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喝破だより 2010年12月号

 「公徳心が欠けとる!」

   ―森繁久彌先生一周忌に思うー

 

 テレビのニュースで森繁久彌先生一周忌の番組を垣間見ました。「森繁通り」なるものが地元の総意で正式名称決定したとか。

 森繁さん(親しく呼ばせて頂いてご免なさい)の名前を知ったのは、中学生の頃で、伯母がよく満州時代の話の中で「森繁さんは満州電信電話放送局の売れっ子アナウンサーで憧れの的だった」と言うことからでした。私が知っている森繁さんは映画のサラリーマン喜劇「社長シリーズ」位でした。

 私の生活とは縁遠くて一生お会いすることなどない存在の人だと思っていのが、喝破道場の無人島でのサバイバル訓練実施がご縁でお会いできました。

 昭和六十一年七月に第一回のサバイバル訓練を開始し、其の後毎年一回開催してきましたが、子ども達が対象のサバイバルですので,幾つかの条件が必要でした。

 一つは無人島に着岸できること。二つ目には「水」があること。三つ目は食糧確保のための「磯」があること。四つ目は遊びの為の「浜」があることです。

 瀬戸内海には沢山の無人島がありますが、この四つの条件を満たす場所はとても少ないのです。

 第一回は喝破道場から随分と離れた多度津沖の佐柳小島(東京の㈱パーマロイ様が一部所有)をお借りして実施しましたが、フェリーを使って本島の佐柳島に渡り、そのあと漁師さんにお願いして小舟で数回に分乗して上陸するなど時間と経費が掛かり過ぎる事から一回のみで断念しました。

 そして道場からさほど遠くないところで条件を満たしている兜島を発見しました。無人島と雖も必ず所有者が居ますので調べてみると俳優の森繁久彌さんでした。所有者が分かってもどうやってコンタクトをとっていいやら分かりませんし、ましてや天下の俳優森繁久彌さんです。

 様々なルートを使ったために却って混乱を起こしてしまいましたが、最終的には奥様より直接ご連絡を頂き、名古屋の公演会場にお訪ねすることとなりました。

 お訪ねして始めてみる楽屋は広く大きく煌びやかで表舞台にも劣らぬように見えました。控室前には森繁久彌さん江とか加藤大介さん江などと大物俳優の名前が入った幟が所狭しと並び立ててありました。

 少しすると舞台衣装のままの森繁さんが付き人に伴われて現われ、開口一番「坊ンさん、僕のところに来るのにどうして色んな人を介して来るの。いいことしてるのにどうして直接私を訪ねて来ないのだ。これからは直接訪ねて来るようにしなさい。それから、島は使っていいけど今の人間は公徳心がない。島の海岸は私の庭なんだ。その庭に勝手に上がり込んでゴミの山にして帰る。坊ンさんはもっと公徳心を説きなさい…」舞台衣装のまま畳み込むように話されるその時の森繁久彌さんが巨人のように思えて萎縮してしまいました。

 話が終わると森繁さんはさっと踵を返して控室に帰って行き、その間三分足らずの時間でした。

「すいませんね。先生は次の出番があり衣装直しがあるので時間がないのです。先生から指定席の券を預かっていまして『ゆっくり観ていってもらいなさい』と言われていますので、ゆっくり観て行ってください…。」

 頂いた達筆の手紙を見る度に思い出す巨人の森繁先生です。

ー大燈記ー